『絶対にゆるまないネジ』小さな会社が「世界一」になる方法 | 若林克彦
ローテクな技術でも、コツコツと突き詰めていけば、他社との差別化も可能になります。うちのようにごく普通の会社であったとしても、その分野で世界一になることができるんです。
なぜなら、世の中のモノは常に”不完全”だからです。当然、そこには必ず改良の余地があります。だから「どんなビジネスだってチャンスがある」と私は思うんです。
――『はじめに』
「日本のものづくり」がすごい。
世界中で採用される「絶対にゆるまないネジ」
著者は、「ハードロックナット」を開発・販売するハードロック工業の創業者です。
「ハードロックナット」は、鉄道、原子力発電所、海外の鉄道、そして、スカイツリーで採用された「絶対にゆるまないネジ」。
世界一の製品を作り上げた社長が、「オンリーワン商品」かつ「ロングセラー商品」を生み出す秘訣を語っています。
ちなみに、ハードロック工業の基本理念は、3つあり、毎日唱和しているそうです。
- 「心豊かな創造性を磨き、無から有を生み出し進展させる」
- 「アイデアの開発を通じ、人と企業と産業社会の発展に貢献する」
- 「この社会はわが社のための道場であり、見るもの触れるもの、すべてわが師である」
▼本の目次や要約は、アマゾンのページをご覧ください。
絶対にゆるまないネジ―小さな会社が「世界一」になる方法
「成功」を捨て、さらなる「成功」を手に入れる
若林さんのキャリアは、バルブメーカーに就職してスタートしました。
あるとき、「ゆるまないネジ」のニーズを知り、世の中に広めたいと思い、独立。
「Uナット」という製品がヒットし、会社は軌道に乗ります。ですが、「Uナット」は、既存の商品に比べて圧倒的に「ゆるまない」ナットだったのですが、「絶対に」ではなかった。
そこで、「絶対にゆるまない」商品を開発しようと思い、共同創業者に会社を無償で譲渡します。月商1億円の会社です。若林さんの手元に残ったのは、Uナットの特許料「売上3%」のみ。
またゼロから会社を作り、最終的には、世界中で採用される商品を作り上げました。
「世の中に役立つ商品をつくる」という信念のもと、邁進してきた若林さん。そんな人が語る話が、おもしろくないはずがありません。
「アイデア」について
若林さんが大切にしているのは、「アイデア」です。
アイデアは、誰にでも公平に与えられています。それをうまく生かせるかどうかは、その人次第なのです。私のの座右の銘は「アイデアは人を幸せにする」です。よいアイデアは、本当に人を幸せにしてくれるんです。(p5)
アイデアを商品にすることについて、
- 「アイデアからオンリーワン商品をつくること」
- 「すぐやる」
- 「時間をかけずにやる」
といったことが書かれていました。
「オンリーワン商品」で心がける3つのこと
「絶対にゆるまないネジ」というオンリーワン商品の開発に成功しました。そんな若林さんが、心がけているのことは、以下の3点。
- すべてのものに好奇心をもち、見て、触れて、感じる
- 世の中の商品はすべて未完成(60~70%)である。どうすればもっと便利になるかを常に考える。
- 世の中のものは、すべて組み合わせで成り立つと考える。
「絶対にゆるまないネジ」開発のヒントは、神社にお参りにいったときに見た鳥居のクサビ。1と3ですね。
「ロングセラー商品」に育てるには
さらに、ロングセラーにするには、
- 「商品は生き物」だと思うこと
- 「必需品」になること
というポイントがあるそうです。
ロングセラー商品にするためには、その商品が消耗品的な位置づけで使われることが必要です。そして、常にエネルギーを注ぎ込み、世の中の必需品として定着させることが大切なんです。(p41)
ロングセラー商品はどうすれば生み出せるか、3つのポイントがあります。
- ひとつのテーマを徹底的に掘り下げる
- 特許期限を1日でも長く延ばす工夫をする
- 開発者が情熱を注ぎ込む
「営業」について
「いい製品があれば、売れる」のではなく、社長は、「開発の次は営業が大切だ」としています。
売るための必死の営業努力が、色々紹介されています。詳しくは、ぜひ本書でお確かめください。ちょっと胸の熱くなる話もあります。
営業活動の成果は、日々動いたことの積み重ねです。オンリーワンの開発もそうですが、営業活動でも、成果がすぐに出ないからといって目先の結果だけにとらわれてはいけません。本物の商品であったとしても、世間さまに知っていただくまでには時間がかかるのです。(p51)
社長が語ると、説得力のある話ですよねぇ。
商品がよいから売れるとは限らないのです。まず世間にその商品を知っていただくこと、これがまず必要。次にその商品のよさをご理解いただくこと、これが次に必要なこと。そして適正な価格でもってご納得いただき、ご購入いただくというのが最後のステップなんです。営業活動とは、このステップを愚直に踏んでいくことです。(p63)
中小企業が営業で成功するポイント
- 最初はトップ自らがあたる
- 最終ユーザーの評価・ニーズを把握する
- 知名度を上げる努力を怠らない
- なんでもいいから他社にない特徴をつくる
- 情熱をもって粘り強くあたる
情熱と粘り強さが必要かというと、どんな便利でよい商品でも、売れるまでには最低2年くらいの年月が必要だと考えなければならないからです。(p73)
中小企業に限らず、仕事をしていく上で、心がけるポイントでもありますよね。
「国鉄」のエピソード
ちょっと横道に逸れる話なんですが、国鉄に売り込みに行ったときのエピソードが面白かったので、ご紹介します。
当時の国鉄に売り込みに行きましたが、最初は大失敗をしてしまいました。
当初、「ハードロックナットを使うとゆるみませんから、車両や路線の保守点検作業が大幅に省けますよ」という触れ込みで、売りに行ったんです。ところが、当時の国鉄は労働組合が強く、「保守点検の手間が省けるということは、人減らしにつながる」という解釈になってしまうわけなんですね。(p107)
いや、なんかそういう感じだったんだなぁと。
書評のまとめ・感想
なかなか熱い本でした。
ちなみに、若林さんは、「成功の3要素」を
- 好奇心
- 情熱
- 計画性
としています。本書を読めば納得。
創業から成功までのエピソードや、仕事に対する心構えなど、引き込まれる話が多かったです。
特に、商品開発に携わっている人には、オススメの1冊です。
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