【生きる知恵】『WILLPOWER 意志力の科学』ロイ・バウマイスター
ダニー・オブライエンが、知り合いの「気持ち悪いほど生産性が高い」70人にアンケートを送り、整理術の秘密を尋ねたところ、ほとんどの人が特別なソフトウェアや複雑なツールは使っていないと答えた。しかしかなり多くの人がGTDシステムに従っているという。それならペンと紙とフォルダがあれば済む。
――『計画を立てるだけで効果あり』
意思決定のプロセスについての本かとおもいきや、「意志力」の効果的な使い方に関する本でした。すっごい面白いです。
意志力を使いこなそう!
私は、非常に優柔不断なんですよね。決断することが苦手だし、先延ばしする癖が抜けません。
『WILLPOWER 意志力の科学』は、そんな私にピッタリの本でした。意思決定をするパワーは毎日一定量で、意志力が消耗されると、良い決定ができなくなるそうです。
意志力についての研究結果や、意志力を高めるためにはどうすればいいのかについて書かれています。幸せと成功のカギは『自己コントロール能力』。納得の一冊でした。面白いです。
▼目次・要約や著者情報は、楽天のページをご覧ください
WILLPOWER意志力の科学
『WILLPOWER 意志力の科学』のわかりやすい要点
本書の最後に解説があります。解説に載っている要約が非常にコンパクトにまとまっていてわかりやすいので、ご紹介します。
■意志力は筋肉のように疲労し、また鍛えることができる
意志力とは何かを明らかにした画期的な発見。意志力はエネルギーであり、使うと消耗する(自我消耗)。意志力を保つには、GI値の低い食べ物をとろう。
■意志力の出所は一つであり、そのエネルギー量には限りがある
だからあれもこれもやろうとせず、目標は一つに絞って集中すべし。そして難しい決断は、「決定疲れ」になる前にしよう。
■大切なのは意志力をいかに使わないかだ
重要なポイントだ。自己コントロール能力の高い人とは、実は意志力を使わない人なのだ。彼らは、脳の自動操縦機能をうまくはたらかせている。また、意志力の配分のしかたも心得ている。
■意志力をすぐ強くできる方法がある
ここも本書の目玉といえるだろう。バウマイスターらはその効果を数々の実験で検証済みだ。
■自己コントロール力は、記録を公開したり、友人とともに進めるほうが高められる
自分を監視し、把握する。さまざまな記録・データはその道具として役立つ。記録をウェブで公開したり、友人と分かち合えば、いっそう効果的だ。
■計画立てるだけで効果あり
計画を立てるだけで、実行しなくても、「頭の中のサル」を追い出すことができる。これは驚きの発見だ。
■「絶対やめる」ではなく、「あとでやろう」と思うとやめられる
「お楽しみはあとまわし」戦術。脳のはたらきを逆手にとった一種の自己トリックだが、私たちの脳はころっとだまされる(良いほうに)。
■先延ばしを防ぐコツがある
「明確な一線」を引く、「代わりのことをやらない」など。いますぐ実行できる方法だ。
■一つうまくいけば、あらゆる面に及ぶ
ささやかなことでも自分を抑える練習をすれば、生活のあらゆる面に波及するようになる。
■記録はこまめにつける
記録はこまめにつけ、自分へのごほうびもこまめにしたほうが効果的。
■よい習慣をつける、こつこつ続ける
自己コントロール能力は、「悪い習慣」から「よい習慣」へとジャンプする時に、最も効果を発揮する。また、「一気にやる派」より「こつこつ続ける派」のほうが成功しやすい。
面白そうと思ったら、ぜひ本書を。期待を裏切らない内容です。詳細で具体的な内容が展開されいます。
意志力とは。意志力を使用する4つのカテゴリー
「意志力」についての研究から二つの教訓があるそうです。
- 意志力の量には限りがあり、それは使うことで消耗する
- すべての種類の行動に用いられる意志力の出所は一つである。
この教訓こそが、本書での大きなポイントです。今まで意識していなかったことでした。
何かを決定すると意志力は消耗する。意志力が消耗すると、決定ができなくなる。あなたが1日中、難しい決断をする仕事をしているなら、ある時点で疲れ始め、エネルギーを温存する策を探し始める。たとえば決定を避ける、あるいは延期するといった方法が考えられるが、最も容易で安全なのは現状を維持することだろう。(p132)
朝に仕事がはかどるのは、一日の始まりは「意志力」がまだ沢山あるからなんでしょうね。
ストレスが人に与える本当の影響は、意志力を消耗させ、その結果として負の感情をコントロールする能力を低下させることなのだ。(p48)
意志力を使う場面は、以下の4つのカテゴリーがあります。
- 思考のコントロール
- 感情のコントロール
- 衝動のコントロール
- パフォーマンスコントロール
本書では、それぞれのコントロールについて説明されています。
目標に到達する計画は、月ごとの計画がベスト
目標達成のために、計画を立てる人も多いと思いますが、どの程度細かく立てるのがいいのでしょうか。大まかにするか、細かくするか。実験結果では、「月ごとの計画」がいいようです。
第1グループは毎日、何を、いつ、どこで勉強するか細かく計画を立てる。第2グループは毎日ではなく、月ごとに同様の計画を立てる。そして第3グループは対照群で、何も計画を立てずに勉強する。(p99)
ちょっと長くなるのですが、引用しますね。
実験者は、毎日計画を立てたグループが一番よい結果が出るはずだと予測した。しかしそれは間違いだった。
月ごとの計画を立てたグループが、勉強の習慣を身につけるという点でも、勉強への姿勢という意味でも、一番成長が見られたのだ。成績がよくない学生(もとから成績のよい学生ではなく)の間でも、月ごとの計画を立てた学生たちのほうが毎日の計画を立てたグループより、はるかに成績が伸びた。
そして実績が終わったあとでも、その習慣が続く確率が高かった。(p99)
しかも、一過性の学習の話だけではなく、定着化でも違いがあるようです。
実験が終わって1年後、どちらのグループの学生も計画を立てるのはやめていたが、月ごとの計画を立てた学生たちのほうが、毎日の計画を立てた学生よりもよい成績をとっていた。(p99)
ちょうど、英語学習について計画を立てようと思っていたので、月ごとに計画を立てることにします。
意志力の使い方を計画する6つのステップ
STEP1:まずは、計画するタイミングを考える
生活の中で生じるストレスは、コントロールはもとより、予測することさえできない。しかし落ち着いている時期、少なくとも穏やかなときに、攻める計画をたてることはできる。(p311)
STEP2:変える習慣を考える
一つか二つか習慣を変えてみる。これらを実行するのに一番いいのは、比較的やることが少なく、意志力をそこに多く注ぎ込めるときだ。そういうときなら慎重に戦う場所を選べるし、難しくてできそうもないことを見極められる。(p311)
STEP3:全体像を見る
戦う場所を選んだら、目の前の問題ではなく、一歩離れたところから全体像を見てみよう。あなたは自分が望んだ場所にいるだろうか?もっといい状態があるだろうか?そのために何ができるだろうか?(p311)
STEP4:定期的に書き留める
これは毎日できることではないし、忙しくてストレスに満ちたときもできない。しかし少なくとも1年に一度、誕生日などに、それまでの1年を振り返って、どんな日々を過ごしたかを書き留めておくくらいはできるだろう。(p311)
STEP5:目標のレビューを行なう
どの目標を達成したか。どの目標が残っているか。もう達成する望みがなくなったものはあるか。できれば5年後に成し遂げていたい漠然とした目標と、もう少し明確な中期的な目標を、常に持っているべきだ。(p312)
STEP6:短期的な目標も考える
1ヶ月で何を成し遂げたいか、そのためにはどうすればいいかを考えておく。計画は柔軟にして、ある程度失敗も織り込んでおく。1ヶ月の終わりに進歩を確かめるときは、毎回、目標を達成している必要はないことを忘れてはいけない。大切なのはあなたの生活が、今月より来月、来月より再来月というように、少しずつよくなることなのだ。(p312)
具体的で参考になりますね。
書評のまとめ・感想
まだまだ紹介したい内容がたくさんあります。非常に内容が充実した一冊。何度も読み返したくなる本です。
研究・実験から「意志力」を解明しようとするアプローチが納得感を得やすかったです。
普段の生活、意思決定の仕方、目標の立て方などなど、しっかりとした内容の良書です!これはいい本。
次に読みたい関連書籍 & オススメ書籍
ちょうど同時期に読んでいた『習慣の力』は、『意思力の科学』と内容がシンクロしていました。2冊とも同時に読むのがオススメです。
本書でアフリカのエピソードが登場します。その話が面白かったので、紹介されていた本を読んでみたいと思っています。
このページの解説で紹介されている本も、面白そうです。
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