[書評] 『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか』城繁幸
「こんな働き方でいいんだろうか」と誰しも一度は考えるのではないでしょうか。今回ご紹介するのは、その疑問に真正面に向き合った若者たちの物語です。
城繁幸さんといえば、『若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来』という本が有名です。そのタイトルを受け継いだような本が、今回取り上げる『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか―アウトサイダーの時代』。
今までとは、少し違う生き方・働き方をする若者を本書では取り上げています。内容は、「アウトサイダーズ 平成的生き方のススメ」という連載に加筆修正。連載ものだけあって、テンポよく読み進められます。
「こんな生き方もあるんだな」って、読んでいて勉強になりますね。群像劇のような本で面白かったです。
昭和的価値観から平成的価値観へ
終身雇用、年功序列・・・決まったレールに乗るサラリーマン。そんな生き方に疑問を感じた若者たちが、レールを降りて、新しい生き方を模索しています。
登場人物は、バラバラ
本書の魅力は、いろいろなキャリアの人が登場してくることです。登場人物を一覧でピックアップしてみましょう。
- 大手流通企業⇒外資系生保。年収が20倍
- 新卒で、外資系投資銀行
- 大新聞社の文化部記者
- 日本のIT企業で世界に勝負したい人
- 大手広告代理店の管理部門で、独立を目指す
- 建設現場・販社営業⇒中小企業人事⇒大手メーカーの系列⇒米国メーカー日本法人人事マネージャー(33歳)
- 大手日本企業⇒社費でMBA取得⇒新興の日系コンサル
- 大企業からNFL
- 大手会計事務所⇒執筆⇒独立して会計事務所(山田真哉)
- 東大文学部卒業⇒出家
- 大手企業本社の海外統括部門のグローバルエリート⇒バーテンダー
- 国家公務員(文科省)⇒プライベートで公務員の転職支援+民間の人材紹介会社のコンサルタント
それぞれの登場人物が、どんなことを考えて、どう働いてきたのか、なぜ今の仕事を選んだのか、を語っています。
若者だけが、原因ではない
本書を読んでいて、興味深かったのが、企業の求めるものと、それに対する若者との関係性についてです。
「君のキャリアビジョンは?」「そのためにどういう自己投資を行ってきましたか?」
企業は採用数を抑制し、幹部候補たりえる人材にターゲットを絞った。つまり、向上心と主体性を持った学生だ。それを勝ち上がった若者は当然、常に自分の将来のビジョンについて高い意識を持っている。レールに乗りそびれた人間は言うまでもない。彼らにはそもそもレールなど無いのだから、どこへ行って何をするかは、自分で決めるしかないのだ。
企業が若者に求めた素質が、結果的に脱昭和的価値観の萌芽となったのは、実に皮肉な話だろう。(p117)
次のも面白い視点だなって思いました。
金武貴氏は外資系投資銀行、外資系コンサルティングファーム、米系投資ファンドなどでキャリアを重ねてきた、いわば”その道”のプロである。彼らは若者の質の低下を嘆く企業に対して、冷ややかな意見だ。
「最近の若者は・・・という人たちは、その程度の学生にしか相手にされていない、という言い方もできるでしょう」(p179)
確かに、そうかもしれませんよね。ちょっと痛快。
「神谷町オープンテラス」「彼岸寺」
余談ですが、本書で登場する東大から僧侶になった松本圭介さん。
「神谷町オープンテラス」を運営している方だったんですね。光明寺境内にあるんですが、ご自身が光明寺に所属しているそうです。
すごく好きなんです、「神谷町オープンテラス」。運営時間が平日昼間なので、なかなか行く機会がないんですけどね。
公式ページ「神谷町オープンテラス」
「ヒルズクラブのページ」の方が写真があってわかりやすいかもしれません。
近くに行く用事がありましたら、ぜひ立ち寄ってみてください。いい空間です。
宗派を超えたインターネット寺院「彼岸寺」も運営しているそうです。面白いサイトですよねぇ、これ。
と、話が逸れましたが、色々なキャリア・生き様を読んで、あらためて自分を振り返る、そんな機会になるオススメの一冊です。
この本を読んでいて、なぜか、小林紀晴さんの「ASIA JAPANESE」を思い出しました。
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