【問題本】『ユニクロ帝国の光と影』横田増生

書評ノート

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「ユニクロの店長だったときは、毎日15、16時間は働いていましたね。それが何年もつづいていたので、肉体的にも精神的にもヘトヘトに疲れ果てていました。辞める前は、だれでもいいから、オレを殺してくれ!って思っていたくらい追いつめられていました」――『ユニクロで働くということ』

ファーストリテイリングが、文藝春秋に対して本書『ユニクロ帝国の光と影』の出版差し止めと、損害賠償を求めて提訴した経緯があります。

訴訟にまでなってしまった本ですが、ルポとしては優れた本ですね。力作。話題になったのでご存知の方も多いと思いますが、あらためてご紹介します。

追記:2013/10/18 「過酷労働」記事の訴訟は、ユニクロ全面敗訴!

ユニクロの歴史と実態

最近何かと世間を賑わせているユニクロですが、ユニクロの実態に迫った最初の本は、この『ユニクロ帝国の光と影』ではないでしょうか。

著者の横田増生さんは、アマゾンの倉庫にアルバイトとして潜入取材を行い執筆した『潜入ルポ アマゾン・ドット・コム』の著者。

潜入ルポ アマゾン・ドット・コム』と同様に、現場の実態をいろいろな角度から調査を行なっています。

▼目次・要約や著者情報は、楽天のページをご覧ください。
ユニクロ帝国の光と影

柳井正という人物は

ファーストリテイリングの代表である柳井社長。元社員などからは、どんな風に映っていたのでしょうか。

「私がいたころの柳井さんの社内外での評判は、人づきあいが下手だとか、シャイだとうか人の気持ちがわからない、というものでした。もともと、人づきあいにおいて不器用なんだと思います。いろんな人と仲良くやったり、交友関係を広げていくタイプではありません。」(p30)

「いい経営者」とは、業界をよくする経営者ではあっても、一緒に働きたいと思う経営者とは違うのではないだろうか、と私は尋ねた。
「柳井さんは一緒に働きやすいという経営者ではなりません。柳井さんのやり方は、一緒に働く人を壊しますよね」(p112)

著者自身の印象は、次のように書かれています。

それまでの取材から私は、柳井とはどれほど権柄ずくで高圧的な人物なのだろうかと、半ば期待していた。しかし、取材の間、柳井は拍子抜けするほど穏やかで、プライベートな質問にも嫌な顔一つせずに答えてくれた。

にこやかで如才ない経営者というのが、柳井の第一印象だった。しかし話を聞いていくと、ビジネスに対する厳しい姿勢を持っており、それが部下への峻厳な評価につながっていることもわかった。(p44)

人によって、それぞれ印象が異なってくるものの、ビジネスに対する厳しさを持ちながらも、別の一面もあるようですね。

「ユニクロ」という職場はどうだったのか

次は、元社員、アルバイトなどの証言を拾ってみましょう。

「ユニクロにはオリジナルのコンセプトというものがない。…(中略)…ユニクロで働いているときは、いつも”一流のニセモノ”を作っているという気持ちから逃れることができなかった」(p56)

「店長は一応管理職なので、どれだけ残業しても残業代は一切つきません。どうしてそんなに長く働くのかですか。そうしないと、さばききれないほどの仕事量があるからです」(p161)

「店長としての達成感や充実感を覚えることはほとんどなかったですね。自分で主体的に働いているというより、ユニクロの商品の自動販売機にでもなった感じでした。それに、上からは売上高と人件費のノルマが下りてきましたし、下の契約社員や準社員からは、仕事の内容が多すぎるという不満が絶えず上がってきました」(p179)

「ユニクロの正社員の人は、上からの命令を嬉々として受け入れる”お利口ロボット”のように見えました」(p186)

イメージ通りといえば、イメージ通りですが、こんなこと書いたから、訴訟を起こされちゃったんですかね。

証言が恣意的というか、もうちょっと、ポジティブに捉えている社員の話があると、バランスがよかったんだと思うんですが、いかがでしょうか。

玉塚社長の人物と更迭劇について

今回読んでいて面白いと思った部分は、玉塚さんの人柄などについての記述です。

社長更迭劇は、断片的にしか知らなかったので、実際は、こんな感じだったのか、と。

「玉塚さんが信頼できると思ったのは、テレビや雑誌で見せる笑顔と、私たち社員に見せる笑顔が同じだったからです。玉塚さんは、社内でもテレビに映るときと同じように優しい人でした。けれど、柳井さんの場合、テレビで見せる顔と社内で見せる顔は全然違っていました。柳井さんはテレビに映るときはいつもニコニコしていますが、社員に接するときは、怒ってばかりいました。”叱咤激励”という言葉がありますが、柳井さんの場合、叱咤ばかりで、激励の部分がありませんでした。いつも社員に脅しをかけて人を動かしているような感じがしました」(p118)

二人が正面からぶつかった一番の理由は、人事に関する考え方の違いだったという。
「社長になってからの玉塚さんは、どうにかして柳井さんの強烈なトップダウン型のマネジメントスタイルを変えようとしていました。柳井さんのやり方だと限界があるのは柳井さん自身にもわかっていたし、玉塚さんは柳井さんのワンマン経営では、部下が自分の頭で考えなくなり、次のアイデアや人材が育たなくなることを心配していたんです」(p120)

店舗の担当者を頭ごなしに叱責する柳井に向かって、玉塚が「担当者の頭が真っ白になるようなことは言わないでください」と諌めた話が出てくる。その真意について玉塚は、「柳井さんが直接担当者を叱れば、脳が停止状態になる。そうすれば、自分で考えずに(柳井に)言われたとおりにやるようになって、担当者は成長しない」と説明している。(p121)

個人的には、玉塚さん自身に、興味を抱く内容でした。ユニクロ退職後も、ご活躍されていますもんね。実力者であり、人格者なのでしょう。

書評のまとめ・感想

柳井さんの著書『一勝九敗』『成功は一日で捨て去れ』から抜粋が多かったところが、少し残念ですが、それ以外は、元社員の声、社内体制・歴史、ZARAとの比較など、色々な観点からユニクロを捉えていて、読み応えがあります。

まさに光と影。

ただ、ちょっと悪い方向に寄り過ぎな感じはします。影ばかりではないのが要注意です。結論ありき、なのかなぁと。ルポは、意図的に暗部を照らす側面があると思うので、仕方ないと思いますが。

ユニクロがどういう企業なのかを知る会社研究としても優れた良書だと思います。

ユニクロから提訴されて逆に話題になっちゃいましたね、この本。出版差し止めになるには、惜しい本です。

次に読みたい関連書籍 & オススメ本

著者の横田増生さんのインタビュー記事を見つけました。

世界にはユニクロ以外の「答え」がある 労働者の視点も忘れるな

つい最近、東洋経済から、熱の入った特集が掲載されていましたね。かなり面白い内容です。

ユニクロ 疲弊する職場 [拡大版]

本書で度々抜粋されていた柳井社長ご自身の著書を読んでみたいところ。

最近話題になった本で、なかなかリアルです。

あと、ユニクロ関連で私が読んだことある本だと、これ。本社の様子がわかります。

最後に、著者のアマゾンのルポをオススメしておきます。

この本が、かなりの力作です。人間模様も面白かった。

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