【時間について考える】『すべては「先送り」でうまくいく ――意思決定とタイミングの科学』フランク・パートノイ

書評ノート

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バフェットはこうも言っている。「我々の仕事は、行動を起こすことによって報酬が得られるわけではない。正しい判断をすることによって儲けが入るのだ。そのためにどれくらい待つかと問われれば、永遠でも、と答えよう」
――『バフェットの成功の核心はどこ?』

「先送り」がちな皆さん(主に私)に贈る1冊!

時間とタイミングについて考えてみよう

「先送りしても大丈夫」みたいな内容かと思って読み始めたんですが、もっと深くて、興味深い事例がぎっしり詰まっていました。

英語の原題が「WAIT: The Art and Science of Delay」。研究的な視点からの考察が中心で、面白いです!邦題の印象と内容がちょっと不一致な感じがします。

▼目次・要約や著者情報は、楽天のページをご覧ください
すべては「先送り」でうまくいく

1秒以下の先送り

プロテニスプレーヤーを例として、先送りが果たす効用について述べています。

この事例を読むと、本書を通じて「先送りがうまくいく」というのはどういうことなのかがわかります。

リベットの結論は、あらゆる種類の意志決定に当てはまる。プロのテニス選手と野球選手が優れた判断を下すために採用している2ステップのアプローチは、私たちがもっと時間のかかる公私の意志決定の場面でとるべきアプローチと同じなのだ。

第一のステップは、反応するまでに自分にはどれくらいの時間が与えられているのか、だいたいを見極める。

そして第二のステップは、見極めたフレームの中で、最大限に対応を先送りする。(p37)

想像してみると、球技は全般的にそうなのかもしれませんね。視覚の反応速度は、誰でもほぼ変わらないようです。

ただ、身体的速度が速ければ速いほど、考える時間が増え、そこに実力差が生まれる、ということです。

ファストフードが心に与える影響

スピードアップすればいい、という話でもないようです。

ファストフードの影響から浮かび上がってくるのは、行動を加速して時間を節約することの潜在的な危険性である。ファストフードはすばらしい時短ツールだ。しかし、スピードアップして時間を節約すると、幸せを感じる力が低くなる。ほかのことをする時間の余裕ができて、美しい写真を見たり音楽を聴いたり、本来なら心地よくなるはずの活動をしても、私たちはあまりハッピーにならない。(p71)

ファストフードの中で何か作業をすると、無意識のうちに、作業速度が上がるそうです。現代社会において、ファストフードの存在は、無意識レベルで影響を与えていると考えると、なかなか怖いものですね。

素人と玄人の差

エキスパートは、何が違うのか、それを時間的な観点と判断という視点から、論じています。

高度なスキルを習得したエキスパートにとって、脳がいっぱいになることがかならずしも問題というわけではない。むしろ、素人に対してエキスパートが有利なのは、刺激で脳がいっぱいになった状態でも的確な意思決定を行なう力があるからだ。エキスパートは湧き出る邪念の元栓を閉め、経験と直観に基づいて見事に反応することができるのである。(p85)

なんか、わかる気がします。

素人はその正反対だ。時間の重圧を受けて、長く時間をとりすぎてしまい、直感も間違っていて、結果的にひどい結果を出す。ここから読み取れるメッセージは明らかだ。判断まで2、3秒しかない状況に対処するなら、エキスパートでなければ分が悪いのである。(p88)

「素人が迷ったときは、行動するな」。シンプルですが、なんかすごく印象的な内容でした。

その分野のエキスパートではなく、合理的に選択肢を比較・選別する時間もないとき、最善の道は往々にして何もしないことだ。素人は間違った行動に出やすいので、たいていはまったく動かないのが正しい動きなのだ

世界一流のエキスパートであっても、状況によっては素人になる。その場合はなにもしないほうがいい。どうすればいいのか自分にははっきりわかっていると確信していても、何か迷いがあって動けないなら、行動は控えたほうがいい。(p91)

面白い視点でした。

上がり症の人が、うまく話せるようになるには

緊張すると、慌てて話しちゃう人いますよね。そうです、私です。なるべくゆっくり間をとるようにして、話すだけでも、随分違ってきますよね。

毎日の生活の中にも、会話に間をはさむ機会は数多く転がっている。たいてい――特にストレスを感じているとき、私たちはその機会をふいにして、無制御に直感のままにしゃべってしまう。とっさのリアクションをして、とにかく沈黙を埋めようとしてしまう。だが、言葉のタイミングはもっと効果的にマネジメントできるはずだ。それには意識的な努力と練習を要するし、最初は自意識過剰になって、ぎくしゃくしてしまうかもしれない。しかし、話す言葉を変えなくても、その言葉を発するタイミングをほんの少し遅らせることで、私たちも「話がうまい人」になれる。(p142)

効果的な謝罪の方法

4つのステップにわけて、解説しています。なるほど、納得。

  1. 自分がその行為を行ったと認める
  2. 起きたことを説明する
  3. 自責の念を示す
  4. 可能な限りダメージ修復に努める

このチェックリストには、ふたつの重要な役目がある。ひとつは、謝罪に必要な要素を把握して、それぞれの順を踏んでクリアしていけるようにすること。もうひとつは、一段下クリアするごとに自然にいったん間を置くので、性急な弁明をせずにすむことだ。(p169)

お金と時間感覚の問題

最後に、非常に興味深いし、個人的な感覚と合う話をご紹介します。それは、「金銭」についてです。

感覚的には正反対に思えるが、人はお金を稼げば稼ぐほど、時間に対してプレッシャーを感じてしまう。研究によれば、たとえ労働時間は変わらなかったとしても、収入が増えると時間に対するストレスも増すのだ。

稼ぎが増えるにつれ、「時間がない」と感じるようになっていくのがわかるだろう。(p250)

「時間がない」と「稼ぐ」の関係についての記述です。

そして私たちは、稼ぎが多くなると、自分の時間は以前より貴重なものになったと感じる。それは正しい。だが、その結果として、私たちは自分の時間が希少になったとも感じるのだ。(p251)

これが、結構面白いなって思いました。考えるだけでも、気持ちに影響を与えるようです。なんか、すっごくわかります。

さらにデヴォーは、時間あたりの賃金のことを考えるだけで、余暇を楽しむ気持ちが損なわれることもつきとめた。(p251)

時間給よりも、固定料金の方がいい、という話。残業時間を稼いでいるような感覚が出てくると、むしろ給料固定の方が、伸び伸び仕事ができるんじゃないかって思ったことが過去ありました。

エコノミストやコンサルタントも、時給制より固定料金制のほうが効率がよいと主張する。労働者にコストを理解させ、そのプロジェクトにあてる時間を有効活用させる後押しになるからだ。だが、もしあなたが時間で課金しているのならば、固定料金制に切り替えたほうがいい理由は、他にもある。そのほうがあなたのストレスが減り、もっと幸せな気持ちになれるのだ。時給制から離れることは、時計からの解放を意味するのである。(p253)

なんだか、随分うなずきながら読んでいました。

書評のまとめ・感想

私は、非常に先送りしがちな性格なので、自分を慰めようと思って読み始めた1冊でしたが、いい意味で期待を裏切る内容でした。

どちらかというと、意志決定のタイミングや、個人的な時間感覚と客観的に分析に基づく時間感覚のズレ、そういった考察が中心です。

自己啓発系の本ではなくて、意思決定の考察の本だと思って読むとしっくりきます。

副題の「意思決定とタイミングの科学」の方が、本書の内容を的確に表現しています。そこに興味を持ったら、ぜひ一回読んでみてはいかがでしょうか。

次に読みたい関連書籍 & オススメ書籍

本書で紹介されていて、興味を持った本をピックアップしてみます。

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