ポンパレモールの行方~『楽天 vs リクルート』の仁義ある闘い
楽天のエントリを書いたついでに、今回はリクルートとの話でも。先日、リクルートから、ショッピングモール事業「ポンパレモール」を3月15日より開始する、という正式発表がありました。
楽天を狙うリクルート:ポンパレモール
今回、ついに、楽天の本丸である「楽天市場」の競合サービスを開始するリクルート。
リクルートは、このほかにも、最近ゴルフ事業で「楽天GORA」に対抗して、「じゃらんゴルフ」をスタートさせました。
リクルートが未開拓で、楽天が、ある程度マーケットを握っている分野への進出が目立ちますね。
※ポンパレモールのホームページhttp://www.ponparemall.com/
参考:プレスリリース「ショッピングモール事業「ポンパレモール」サービス 3月15日開始予定のお知らせ」
楽天とリクルートの事業のすみわけ
@takanori1976さんの記事「リクルート・ヤフー・楽天の比較」が、非常にわかりやすくまとめられています。すごい。
人生の転機をもれなくカバーするような事業展開をするリクルートと、楽天市場を中心に、EC主力で事業を展開している楽天。リアルvsネット。
現状、うまくすみわけながら、お互いの主力市場にちょっかいを出し始めている、という状況でしょうか。
今回は、リクルートの事業を軸として、いくつかの事業分野を見てみましょう。
就職・結婚はリクルートが圧勝
就職といえばリクナビ。もう圧倒的です。ちなみに、就活でお世話になる「みんなの就職活動日記(みん就)」は楽天ですね。
結婚市場は、ほぼ独占状態のゼクシィ。紙がネットよりも強く、ライバルがいない結婚市場。ネットだけで勝負する楽天ウェディングは、分が悪いです。
就職サイトは、マイナビ、en、日経など競合が頑張っている印象がありますが、結婚サイトは、ぐるなび、マイナビがあれど、現状はゼクシィ一人勝ち状態ではないでしょうか。
就職、結婚。どっちも共通して耳にすることは、「掲載料がバカ高い」。
常日頃から転職サイトをよくチェックしますが、中途採用は、リクナビに出さずに、日経やマイナビに掲載している企業が目立ちますね。
自社のホームページでの中途採用でも、マイナビに転送される、という企業も見かけます。
ホットペッパービューティは、最近スゴイらしい
美容業界におけるホットペッパービューティーの存在感がスゴイ、と耳にします。私が通っている美容師さんも言ってました。
ホットペッパービューティhttp://beauty.hotpepper.jp/
急成長のひとつの要因が、ホットペッパービューティーに掲載すると無料で使える「SALON BOARD」という予約・顧客管理システムの存在でしょう。
ホットペッパービューティーでの予約はもちろん、他の予約も「SALON BOARD」で管理できます。ほかのシステムいらず。
美容業界は、他の業界に比べれば、個人経営が多く、資本規模が小さいですよね。そのため、相対的にシステムにお金をかけにくい状態でしょう。
そこで、「SALON BOARD」の登場です。システムは、一度使い始めると、便利で止めにくく、スイッチしにくいものです。ましてや無料。がっちりリクルートに囲い込まれますね。
ホットペッパービューティー自体の掲載料が、そこそこのお値段、というオチはありますが、コンビニよりも店舗数が多い美容業界。宣伝費としては、妥当なのでしょう。
ゼクシィの持つ表現に対するイメージの良さや、ホットペッパーという名前の知名度が、ホットペッパービューティーの支えになっているのかもしれません。
楽天は、「楽天サロン」を展開しています。しかし、イメージが大切な美容業界。リクルートに軍配が上がりますね。
真っ向勝負!旅行業界
リクルートと楽天が最も拮抗しているのが、旅行業界ではないでしょうか。宿泊予約サイトは、「楽天トラベル」と「じゃらんnet」とで、ほぼ2強状態ですね。
ビジネスに強い「楽天トラベル」とレジャーに強い「じゃらん」。そんな特徴があるとはいえ、お互いに、相手の強い分野を攻めに入っているのでしょう。
宿泊予約サイトでは、先輩の楽天、後輩のじゃらん。じゃらんの方が、後追いの印象があります。
最近だと、飛行機・電車+ホテル・旅館というダイナミックパッケージに力を入れているようですが、これも楽天が先陣を切っていたように記憶しています。
今後の「ポンパレモール」の行く末を占う上で、リクルートが楽天に挑戦した事例として、宿泊予約サイトについて、ちょっと深堀りしてみましょう。
「楽天トラベル」に追いついた後発の「じゃらんnet」
まず、簡単に歴史を振り返りましょう。ざっくりいうと、楽天トラベルの母体のひとつが、国内初の宿泊予約サイトでした。(詳細は、楽天トラベルのWikipediaをご覧ください)。
一方、じゃらんは、元々雑誌媒体が主力で、その派生として、ネットに進出した経緯があります。
楽天トラベルの独走
インターネット黎明期は、楽天トラベルの母体のひとつである国内初の宿泊予約サイトが、先行者利益で独占状態(のちにこのサイトは、楽天トラベルが買収)。
その後、大手各社が参入するも、先行者利益+ネット専業の強さから、楽天トラベルが一歩前に出た状況が続きます。
楽天トラベルに依存し始めるホテル・旅館
かつて、多くのホテル・旅館は、JTBを中心とする旅行代理店に依存し、振り回されていました。当時、楽天トラベルが独走する中で、インターネット予約においても、似たような状態になります。
手数料値上げ
ひとつの転機は2005年、楽天トラベルの契約改変。手数料値上げです。売上の一部を楽天トラベルに頼っている中、「手数料が上がるなら、楽天トラベルへの掲載を止めます」といえるホテル・旅館は、ほとんどありません。
販売を1社に依存することのリクスが、あらためて鮮明になりました。
楽天市場でも、出店費用・手数料の改変が行われ、似たような状態ですね。最近も、課金体系変更に伴う送料負担の問題が、出店者側に波紋を呼んでいました。
じゃらんの反撃
値上げに従うしかないホテル・旅館。そんな不満がたまり、1社独占の危険性が再度認識され始めたとき、じゃらんが反撃に出ます。
楽天トラベルに比べた手数料の安さを謳い、さらに一定期間、手数料をさらに安くするキャンペーンを展開します。
そこで一気にシェアを伸ばし、現在のような、「楽天トラベル」と「じゃらんnet」の2強時代が訪れました。
めでたし、めでたし、と一筋縄ではいかないのが両雄。その後、2社とも、手数料の値上げがあったんですよね。
じゃらんnetの値上げは、今回の「ポンパレモール」のひとつの肝である、「じゃらん×ホットペッパーポイント」に関係してきます。
リクルートはじゃらんの夢を見るか?
ということで、ちょっと脇道に逸れて、「楽天トラベル」と「じゃらんnet」について、触れてみました。
1社独占状態かつ、課金体系に不満がたまりがちな「楽天市場」。当時の楽天トラベルと似たような状況ですよね。
そこで、今回の「ポンパレモール」のメリットを整理すると
- 利用者のメリット:ポイント付与率3%(楽天は1%)
- 出店者のメリット:システム利用料2.5%(楽天の半額程度)
といったものがあります。
はたして、「ポンパレモール」は、「楽天市場」の牙城をどこまで崩せるのでしょうか。次のじゃらんになるのか。しかし、そこには厳しい壁が立ちはだかっています。
そう、泣く子も黙る「楽天スーパーポイント」の存在です。
逆立ちしてもかなわない「楽天スーパーポイント」の存在
リクルートが推進している「じゃらん×ホットペッパーポイント」。ポイント対象の主力は、じゃらん(旅行)やホットペッパービューティー(美容)でしょう。
ホットペッパーグルメも対象ですが、あくまで「食事券」。あとは、ポンパレやじゃらんゴルフなど。
たしかに、楽天市場・トラベルとも1%付与に対して、じゃらんは2%付与、ポンパレモールは3%付与、と頑張っています。
でも、そもそも貯まったポイントの使い勝手、悪いですよね?
一方で、「楽天のスーパーポイント」は、日用品・食品・書籍はもちろん、あらゆるものにポイントがつきます。そして、使えます。
さらに、「楽天カード」や「楽天Edy」での買い物にもポイント付与。
自社サービス圏内に留まっているリクルートのポイントプログラムに、現段階では勝ち目はないでしょう。
「ポンパレモール」の役割
プレスリリースを読むと、ポイントプログラムと「ポンパレモール」の役割について、ちゃんと書いてあります。
「ポイント交換が可能な品揃え拡充を目的として、要望の声が高かったデイリー領域の品揃えを中心としたショッピングモール」
やはり、まず取り組む課題は、ポイントプログラムの強化なんでしょうね。
現状、じゃらんは、楽天トラベルと拮抗しているとはいえ、楽天ポイントの優位性により、楽天トラベルが依然として強いままです。しばらくはその傾向が続くのでしょう。
ポイントの使い勝手が悪いままだと、「じゃらん×ホットペッパーポイント」をいくら付与したところで、結局何も変わらないですもんね。
とはいえ、楽天も「Rポイントカード」の発行で、リアルの分野を強化しようとしている様子。
さらに強固になろうとしてる「楽天スーパーポイント」に対して、リクルートは、どういう施策を取っていくのでしょうか。楽しみですね。
「ポンパレモール」への期待
「ポンパレモール」の目的に、ポイントの利便性向上が謳われているとはいえ、ECサイトとして、今後どんどん存在感を増してほしい、と個人的には期待しています。
今回は、楽天とリクルートの対比で書きましたが、当然Yahoo!もありますし、Amazonの「Amazon Pages」の存在も気になるところ。
各社が競合を睨みながら、どういう展開をしていくのか、気になりますね。
1社独占の状況が崩れることで、出店者にとっても、利用者にとっても、メリットが大きくなりますもんね。それが、健全な市場の状態といえるのでしょう。
以上。
思いのほか、長くなりすぎて、数回にわければよかったのか、と少し後悔しています。いつか、記事を分割するかもしれません。
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