『パパラギ』はじめて文明を見た南海の酋長ツイアビの演説集 | ツイアビ

書評ノート

Pocket

そう、おまえは誕生のときにさえお金を払わねばならず、おまえが死ぬときも、ただ死んだというだけで、おまえのアイガ(家族)はお金を払わねばならぬ。からだを大地に埋めるにも、思い出のためにおまえの墓の上にころがす大きな石にも、お金がかかる。
――『丸い金属と重たい紙について』

サモサ諸島の酋長ツイアビが見た初めて白人の「文明社会」とは。

文明社会という歪み

サモア諸島にあるウポル島ティアベアに住むツイビア。

ヨーロッパ諸国を回り、先入観を持たずに文明社会を観察した内容を、ツイアビが島々の人に語ります。

その演説を収めたのが本書です。

今の私たちが、普通に暮らしている社会が、彼ら見ると、どれだけ「歪んでいるのか」。

非常に、面白いです。人としての自然な姿から、どんどん離れていっているように見えるんでしょうね。

▼本の目次や要約は、アマゾンのページをご覧ください。
パパラギ はじめて文明を見た南海の酋長ツイアビの演説集

本書のおもしろい読み方

「パパラギ」は、西洋人の意味。ネガティブな意味合いが含まれています。

ツイビアが語る「パパラギ」の社会。つまり、今の私たちの社会です。

おもしろい読み方をひとつ。

「私たちのこと」が書かれていると思わずに、たとえば「どこかの原住民族」について書かれていると思って、本書を読んでみてください。

そうすると「世の中には、おかしな民族がいるものだなぁ」って感じる方もいらっしゃると思います。

それが、「私たち」なんですよね。

私がこんな読み方をしたのは、偶然なんです。

「パパラギ」=西洋人、なんですが、最初は、ツイアビの民族のことだと勘違いしてたんですよね。

自分たちのことについて、冒頭で語っているのかと思って読んでたら、「あれ、これは西洋人の社会のことか」って。

偶然の読み方だったんですが、1回目は、そんな風に読んでみました。

「パパラギ」の面白いコメントを紹介

いくつか

サモアの原住民は、完全な共有財産制度です。そのため、西洋社会の「個人所有」の考え方は、非常におかしく見えるようです。

パパラギは一種特別な、そして最高にこんがらがった考え方をする。彼はいつでも、どうしたらあるものが自分の役に立つのか、そしてどうしたらそれが自分の権利になるのかと考える。それもたいてい、ただひとりだけのためであり、みんなのためではない。このひとりというのは、自分自身のことである。(p68)

冷静に考えると、個人所有って、たしかに「奪い合い」に近いのかもしれませんね。

神からたくさんの物をもらえば、兄弟にも分けてやらねばならない。そうでないと、物は手の中で腐ってしまう。なぜなら神のたくさんの手は、すべての人間に向かって伸びており、だれかひとりが他のものとは不釣り合いにたくさんの物を持つのは、決して神の心ではない。さらに、だれかひとりがこう言うのも神の心ではない。「おれは日なたにいる。おまえは日陰に行け」私たちみんなが、日なたに行くべきである

神が正しいその手の中で、すべてのものを支えておられるかぎり、たたかいもなければ苦しみもない。狡猾なパパラギは、こう言って私たちまでだまそうとする。「神様のものなんて何もない。おまえが手でつかんだものは、おまえのものだ」――そのような愚かな言葉に耳を貸すまい。正しい知恵に耳かたむけよう。すべては神のものだ。(p75)

ニュース・新聞について。「悪いこと」ほどニュースになる。そのおかしさ。

パパラギは何でも、貪欲に取り込む。たとえばどんなに悲しいことでも、健康な人間の理性ならすぐに忘れてしまいたいことでも。そう、まさにそういうよくないこと、人を悲しませるようなことが、どんないいことよりもずっとくわしく伝えられる。そう、よいことを伝えるより、悪いことを伝えるほうがずっと大切で、うれしいことででもあるかのように、こと細かに。(p102)

つねにパパラギは考える。目の前にあるものを、あるがままに楽しもうとしない。

パパラギの生き方は、サバイまで舟で行くのに、岸を離れるとすぐ、サバイへ着くのに時間はどのくらいかかるかと考える男に似ていると言えるだろう。彼は考える。だが、舟旅のあいだじゅう、まわりに広がる美しい景色を見ようとはしない。やがて左の岸に山の背が迫る。それをちらっと見ただけで、もう止まらない――あの山のうしろにはいったい何があるだろう。おそらく湾があるのだろう。深いのかな?せまいのかな?こういう考えのためにもう、若者たちといっしょに歌っていた舟唄どころではなくなってしまう。若い娘たちの冗談も聞こえなくなってしまう。(p108)

「Don’t think. FEEL」が大切だよね、っていう話。

考えることが重い病気であり、人の値打ちをますます低くしてしまうものであることを、パパラギは身をもって私たちに教えてくれた。(p115)

もう私たちは、「考える」ことが当たり前すぎて、ツイアビの感覚がわからないような気がします。

書評のまとめ・感想

ご紹介したのはごく一部です。ツイアビは、マンション、お金、道路、服、考え方、色々なことについて語っています。

今の社会を冷静に見つめてみる、というのも面白いかな、と思って本書を読んでみました。

もうちょっと自然体になって生きることを意識してもいいのかもしれませんね。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

関連記事

【超就職難の絶望】『韓国ワーキングプア 88万ウォン世代』ウ・ソックン、朴権一

韓国の場合、20歳で自分の愛する人と一緒に暮らしたいと考えた瞬間、地獄が目の前に広がることになる。独

記事を読む

【アマゾン倉庫の実態】『潜入ルポ アマゾン・ドット・コム』横田増生

「僕のベゾスに対する第一印象は、童心を持ったビジネスマンというものだ。何回か話をするうちに、既成概念

記事を読む

【何歳でも読みたい】『40代を後悔しない50のリスト』大塚寿

「常に10年後とか20年後の目標設定をして、『なりたい自分』の世界に生きているので、今を生きていない

記事を読む

【成功本】『お金のIQ お金のEQ』本田健

「稼ぎすぎ、貯めすぎ、使いすぎ、心配しすぐには注意しましょう。このお金は、自分と周りの人のために楽し

記事を読む

【一度は読みたい】『サラリーマン漫画の戦後史』真実一郎

サラリーマンには2種類しか存在しない。『宮本から君へ』が大好きなサラリーマンと、『宮本から君へ』が大

記事を読む

村上春樹的マーケティング活動 ~『1Q84』と『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』に関する戯言~

4月12日に、いよいよ村上春樹の新刊『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』が発売されますね!

記事を読む

【ヒトラー✕橋下徹】『独裁者の最強スピーチ術】川上徹也

ヒトラーの最大の武器は「言葉」であり「演説」だった。「演説」の力で独裁者になったといっても過言ではな

記事を読む

【ネタバレなし】で『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』の紹介&感想 村上春樹新刊

『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』を未読・未購入のひとに、作品を紹介してみる記事です。読も

記事を読む

【ホリエモン節】『君がオヤジになる前に』堀江貴文

ビジネスでは、この小利巧な人がいちばん損をしている。理解力も学歴もあるけれど、ためらうから突き抜けら

記事を読む

『就活のしきたり』~踊らされる学生、ふりまわされる企業~石渡嶺司

では、なぜ自己分析がここまで就活で浸透したのでしょうか。理由は簡単で、自己分析を推進する就職情報会社

記事を読む

 
  • 名前:いろはに(@irohani_123

    30代のサラリーマンです。のんびりとした日々を送っています。書評、英語、気になったニュース等をアップしていきます!

    >>詳細プロフィール
    >>お問い合わせ先




PAGE TOP ↑