第1回『ハルキをめぐる読みの冒険』が面白い!海外から見た村上春樹とは。中国の話がおもしろい。
NHKラジオ英語の『英語で読む村上春樹』、毎月最終週は、ゲストを招いて村上春樹を語る『ハルキをめぐる読みの冒険』というコーナーが放送されます。第1回から、相当おもしろかったので、ご紹介したいと思います!
英語講座の1コーナーにしておくには、もったいないくらいのレベルで、充実した内容です。
海外からみた村上春樹とその作品とは。
『ハルキをめぐる読みの冒険』第1回は、海外留学生2人+講師の大沼先生、マシューさんの4人で、村上春樹について語り合っています。
知らない話ばかりで、「へー」ってなる話題ばかりでした。
それぞれの国における村上春樹事情について、様々な視点から話しています。
英語の勉強とは全く関係ない人でも、村上春樹が好きな方なら、毎月1回の『ハルキをめぐる読みの冒険』は、ぜひ聞いてみてはいかがでしょうか。
きっと面白いと思います!
ゲストはベネズエラと中国からの留学生
「ハルキをめぐる読みの冒険」で今回登場するゲストは、二人。
- マヌエル・アスアヘ・アラモさん:ベネズエラ
- ショウ・タン(邵丹)さん:中国
二人とも、「東京大学現代文芸論研究室」に所属している留学生です。『英語で読む村上春樹』講師の沼野先生の研究室ですね。
東京大学現代文芸論研究室
http://www.l.u-tokyo.ac.jp/genbun/
今回は、とくにショウ・タンさんが語る中国における村上春樹が面白かったですね。
2人と村上春樹との出会い
ベネズエラのマヌエルさんが、最初に読んだのは『ノルウェイの森』。
大学はカナダで、そのときに、英語で短編小説を読んだことがあるそうですが、しっかりと読んだ最初の小説は、『ノルウェイの森』。
しかも、日本に来てから日本語で読んだそうです。辞書をいっぱい引きながら。外国語で初めて読んだ小説が村上春樹だったと。
中国のショウ・タンさんも、最初に読んだのは、『ノルウェイの森』。
「流行作家であればあるほど読まない」スタンスだったのですが、偶然手に入れたのが英訳された『ノルウェイの森』を読んで、「この人すごいと思った」そうです。
「もっと読みたい、もっと近づきたい」と思い、原書に挑戦します。
1年間くらい、「あいうえお」からスタートして、独力で日本語を勉強たそうです。日本語を勉強する方法として、村上春樹を読む。
ショウ・タンさんにとっては、『村上春樹は私にとって日本現代文学の水先案内人』とのこと。
二人に共通するのは、村上春樹をきっかけとして、ものすごい努力をして、日本語を勉強したことですね。
いや、このくらい本気になれるのはすごい。
私も、フラフラ英語を勉強しいてる場合じゃないですね。もっと本気にならないと。
欧米と東アジアにおける人気作品の違い
欧米や南米と、東アジアでは、人気のある村上春樹の作品は、違うようです。
英語圏では、『羊をめぐる冒険』が最初に評価をされており、一番人気で、東アシアでは、『ノルウェイの森』の人気が高いようです。
大沼さんと一緒に講師をしているマシューさん(アメリカ人)が最初に読んだ作品は、『世界の終わりと、ハードボイルド・ワンダーランド』。
アメリカでは、『羊をめぐる冒険』と同様に欧米で人気の高い作品。一方で、『ノルウェイの森』は、英語圏だと苦手な人も多いそうです。
大沼先生が、以下のようなコメントをしていました。
『ノルウェイの森』が東アジアで評価が高いのは、ちょっとわかる気がしますね。
感情に訴えかけるようなところが、日本、韓国、中国、共通の感性があるかもしれない。
中国における村上春樹の作品
中国の中における村上春樹の話が面白かったので、ショウ・タンさんのコメントをピックアップしてみましょう。
- パッと見てすごく日本的なだ、という要素が村上春樹の本の中には入っていない。
- 舞台はだいたい東京なんだけど、どこの都市に置き換えても違和感がない。
- 村上春樹に出てくる文化的な要素に、すごい親しみを感じる。近くにいる親しい友達が話しかけてくるような感じがする。
都心に住んでいて、都市の生活にいつの間にか慣らされていて、速いペースで毎日毎日、日々を送っていて・・・。
でも、その中で自分がなんとなく感じている、なんともいえないような感覚。そういう感覚にうまく表現を与えたのは、村上さんだと思います。
彼の本を読んでいて、自分の足りない部分が補充されているような感じがする。それでみんながすごく救われた感じがしたのかもしれない。特に若い世代。
ショウ・タンさんが放送中に紹介していた『村上春樹のなかの中国』って本が、ちょっとおもしろそう!
中国の若者たちの間にある「村上春樹」という存在
さらに、70年代、80年代生まれの作家の話と、村上春樹の作品は何が違うのかに触れていきます。
- 2012年にノーベル文学賞を受賞した中国人作家の莫言さんの作品は、中国の農村の話が中心。
- 中国は都市化の進展が20~30年ほど遅れいていた。
私が面白いと思ったコメントが
- 都市をテーマにして純文学を書く作家はまだ登場していない。
ということ。そこで、都市をテーマとした村上春樹の作品が出てくるわけですね。
村上春樹の本が翻訳された時点では、中国人にとっては、外国人作家が書いた本というよりは、むしろ今の私たちの本音を代弁する作家がやっとでてきたな、っていう感じがした。
都市部の若者たちにとっては、主人公と自分を重ねられるような作品だったのかもしれませんね。
東アジアで、そんなに日本人の作家だっていう、名前は日本人、地名は日本。それを除いたら、日本人の作家が書いた本という実感はあまり湧いてこない。
中国の若者の間では、「プチブル」というキーワードがあるそうです。若者のブランド。
- 喫茶店でコーヒーとかカフェオレとかおしゃれな飲み物を飲みながら、村上春樹を読む
なんか、日本でいうと、スタバでMacBookAirな感じですね。
日本語が読めなくても、原作を買って、村上春樹作品をコレクションする若者もいるそうです。
中国人若手作家アニー・ベイベーが、作中に、「村上春樹が好きで買い求めるという登場人物」を描いた、とショウ・タンさんが紹介していました。
アマゾンで探してみたんですが、日本語で読めるアニー・ベイベーさんの作品は、この1冊だけでした。
次回の放送は、6月2日!
『英語で読む村上春樹』に毎月最終週に、「ハルキをめぐる読みの冒険」が放送されます。
4月の第1回が、かなり面白かったので、次回の放送が非常に楽しみです。
1か月後かぁ・・・。待ち遠しいですね。第2回は、第1回と同じゲストで、今回の続きを放送するようです。
1年間「ハルキをめぐる読みの冒険」のコーナーが続くなら、村上春樹について、今まで以上に、いろいろ知ることができそうですね!
『英語で読む村上春樹』の記事一覧は、こちらからどうぞ!
⇒ 過去記事一覧・まとめ
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