【高校野球名監督】『逆境を生き抜く力』我喜屋優

書評ノート

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「野球の試合は9回で終わるが、人生のスコアボードは一生つづく。お前たちはその長い長いスコアボードで、ずっと戦っていかなければいけない」
――『人生のスコアボードで一流になれ』

「逆境」にいても、成果を出し続けた高校野球の名監督。監督の考えが伝わる良書です。

「逆境」を乗り越えていくには

高校野球の名監督「我喜屋優」さんの著書です。母校の興南高校野球が、春夏の甲子園で優勝。夏の甲子園優勝は、沖縄県で初でした。

Wikipediaの情報がコンパクトでわかりすいです。

Wikipedia:我喜屋優

教育者としての視点、野球監督としての視点、いろいろなメッセージが込められています。

▼本の目次・要約や、著者の経歴は、楽天のページが見やすいです。
逆境を生き抜く力

野球の練習よりも生活態度が大切

生徒には、野球より前に生活指導を徹底するそうです。たとえば、以下のようなこと。

  • 早寝早起き
  • 食事は残さず食べる
  • 大きな声であいさつをする
  • 整理整頓を心がける
  • 自分の意見を自分の言葉で伝える

たとえ一時的に表面を取りつくろっても、いつかかならずボロが出る。野球の技術を高めるよりも、生活態度をあらためることのほうが、はるかに大切なことなのだ。(p15)

「就活先生」の著者、竹中先生も同じようなことを言っていました。

野球部の生徒指導について、他にもまだ色々あるようです。

  • どんなときでも時間厳守、5分前行動を徹底する
  • 誰に会っても、気持よく大きな声であいさつする
  • いつでもだらだらせず、すばやく動く
  • ものやお金の貸し借り、立て替えは一切禁止
  • 下級生に私的な用事を頼むことは禁止
  • 食事中は食器の音を立てない
  • 食器は洗いやすいように自分を片づける
  • 椅子の出し入れの際などは、音を立てない
  • あらたまった場所(宿泊先での朝食時など)では、襟付きのシャツを着る

ここまでできれば、十分立派ですよね。大人でもなかなかできない。高校のときに、身につけておけば、その先の人生でも、きっと役に立ちますよね。

こういう小さな出来事を守れない者にかぎり大事な試合でかならずミスをする。
小さなことをおろそかにし、ルールを破るような者は、どんなに技術があっても試合に出さない。
これが私の信念だ。(p23)」

野球を通じて、生徒指導を行う、という姿勢を一貫して取っています。人生において、甲子園を目指すことは通過点でしかない。その後のためにも、生徒指導が大切なんだ、という考えなのでしょう。

記事の冒頭で紹介した文章にも、そんな先生の考えが反映されています。卒業後に活躍する人になってほしい、という願いを持っていらっしゃるようです。

ちなみに、朝の散歩も推奨しています。

「朝の15分散歩」で五感をみがけば「言葉」が得られる(p24)

「魂知和」の言葉で逆境を乗り切れ

先生が、指導者として常に掲げている言葉が、「魂知和」。読みは「こんちは」。

  • 何事にも信念を持って取り組む「魂」
  • たくさんの知恵や知識を身につける「知」
  • 仲間の信頼や協力を得る「和」

何事においても、非常に大切なこと、としています。

逆境を乗り越えていく言葉

本書で登場する「逆境」について関する言葉をご紹介します。

「逆境」を乗り越えて、人並み外れた成果を出してきた先生の言葉ですので、実感がこもっていますね。

ハンデをハンデと思わなくなったとき、人は大きく成長できる。
そして、新しい自分に出会えるのだ。(p67)

ハンデや逆境は、知恵を絞り工夫をこらせば、かならず順境に変わる。
「こうすればできるかもしれない」「次はあの方法を試してみよう」という知恵を生みだすチャンスでもある。
嫌なことから逃げてばかりいたら、いつまでも逆境のままだ。(p91)

つらいことや嫌なこと、苦しいことを乗り越えて手にするものこそ、本当の幸せなのだと思う。
つらければつらいほど、苦しければ苦しいほど、乗り越えた先にはきっと大きな幸せが待っている。
つらいことや苦しいことは「幸せの源」なのだ。(p94)

「嫌なものほど噛みしめて味わえ。噛んでいるうちに、だんだん甘くなる。
それが自分の力になる」(p101)

「目指します」「一生懸命やります」では成しとげられず(p174)

たまに「逆境」を感じることがあるのですが、こういう言葉を読んで、自分を励ましたいと思います。

「ディスポート」精神について

先生は、沖縄で育ち、その後、北海道で高校野球の監督をし、そして、また沖縄に戻ってきます。

先生は「ディスポート」精神という信念を持っています。

元の場所から離れ、旅立ってこそ、はじめてわかることがある。
新しい場所で生まれ変わり、新しい自分と出会うことができる。
新しい自分に出会い、経験を重ねていくことで、人は成長することができるのだ。

このことを私は、「スポーツ(sports)」の語源でもある「ディスポート(disport)」精神と呼んでいる。
「ディス」は離れる、「ポート」は港。

つまり、ひとつの場所にとどまり、同じ環境で同じものばかり見ていないで、チャンスがあれば船を出港させよう、港を離れるたびに新しいことに出会い、経験を積んで生まれ変わろう、ということだ。
新しい自分に出会うことで、人は成長してゆく。(p76)

グローバルと叫ばれている昨今、日本にとどまらず、果敢に海外で働く。そんなときにも、「ディスポート」精神を思い出してみるといいのかもしれません。

「社会人に役立つ人材」を育てる

さきほども触れましたが、先生は、「甲子園で優勝すること」がゴールではなく、もっとずっと先に置いています。

「勝ちにこだわる」のは当然大切ですが、短期的な結果だけではなく、長期的に「勝つ」ということが重要ですよね。

大切な子どもたちを預かり、教育をまかされた以上、きれいにみがいて、かならず付加価値をつけて次のステージへ送り出したい。

つまり、社会に出た時に役立つ人物だ。

「心」を育てることが大切なのだ。(p115)

先生の考える「社会に役立つ人物」というのは、以下のような人物です。

  • 自分より他人のために働けること
  • 小さなことでも真摯に取り組むこと
  • 素直に人の話を聞けること
  • リーダーシップをとれること

こういう人物が育ったら、たしかに社会で活躍できる人物へと成長する素地になりますよね。

私は、全然こんな素地がありませんが・・・。

「人生のスコアボードはずっとつづく」

そんな話については、以下の言葉に、先生の想いが凝縮されています。

いつまでもよろこんでいる暇はないし、落ち込んでいる暇もない。レギュラーになることや、甲子園にいくことだけが人生の目標ではない。それよりも、人生のスコアボードで確実に点を重ねて、人生の勝利者になってほしいと思う。 (p188)

社会人になった今からでも、大切にしたい言葉ですね。今が全てではないから、今が勝っても負けても一喜一憂せずに、次に勝つことを考えていく、そんな心がけが必要なのかもしれません。

素直に恩を受け、誰かに返す

「受けた恩はほんに返すのではなく、後世に返すこと」が大事、だと色々なところで語られていますね。

叱られたことが財産だと思ったら、次の世代にその財産を伝えてほしい。道徳心や倫理観というのは、人から人へ伝わりながら育まれていくものなのだ。

「自分さえよければいい」という考えでは、決して世の中はよくならない。(p168)

本書での以下の言葉がよかったです。

お年寄りを大切にするのは、これからゆく道。
子どもを大切にするのは、自分が来た密。
受けた恩は、次の世代に返す。
与えた恩は、戻ってこなくてもいい。(p168)

胸に響きます。

書評のまとめ・感想

「自分は恵まれていない」「もっといい環境だったら・・・」と自己憐憫に陥ることがあるかもしれません。

でも、そんな「逆境」にめげずに結果を出していくことで、人生が開けることもあると思います。

「甲子園で勝つ」という短期的なゴールではなく、「人生で勝つ」という長期的なゴールを目指して、生徒を指導していく考えが、非常に感銘を受けました。

生徒に指導している「日々の生活をしっかり過ごすこと」。これは、今すぐに私でも取り組めることです。

仕事の結果ばかりではなく、毎日をもっと丁寧に、きちんとした生活を心がけようと思いました。

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