【外資系に興味があるなら】『外資系の流儀』佐藤智恵
CEOがもっとも気にしているのは「身長の高さ」。統計上、背の高い人は威厳があるように見えるという。「低い身長とハゲ、どっちを改善したいですか?」という問いに、65%が「身長」と答えていた。調査によると、一番格好わるいと思われるのが、バーコードのような髪型だそうだ。
――『ハゲは問題なし』
外資系企業の実態から、外資系社員の働き方、活躍できる人材、履歴書の書き方まで、様々な視点から外資家について、書かれています。
見えそうで見えない外資系
最近は、外資系について書かれた本が増えてきているので、以前ほど、外資系に対する誤解のようなものは減ってきていると思います。
たとえば、「外資系=人間関係がドライ。上司との付き合いがない」というのは、完全なる誤解だというのは、大体どの本でも書いてありますね。
著者の佐藤智恵さんは、NHK、コロンビア大MBA、ボスコン、外資系メディア、という経歴の持ち主。
前作の「ゼロからのMBA」を随分昔に読んだ記憶があります。東大卒のNHKディレクター、という時点で、「ゼロ」からではないと思うのですが・・・。
とはいえ、書き口や内容がなかなか面白い本だったので、今回、本書を手に取りました。
トップハンターが狙う経営人材
本書が書かれた2012年時点でヘッドハンティングが活発なのは、金融、消費財、ヘルスケア、IT・通信、製造業等だそうです。
その中で、特にどんな人材を狙っているのか。著者のヒアリングによると、以下のような人材です。
- 外資系事業会社日本法人の経営幹部・管理職
- 外資系コンサルティング会社出身者
- 外資系金融機関出身者
- 大手日本企業の経営幹部・管理職で海外駐在経験がある人
- 大手日本企業の本社でグローバルな規模で本社業務を経験した人(広報、人事等)
- 海外の大学院を卒業している人(ビジネススクール、ロースクール等)
「外資系企業は、日本企業のベストプラクティスを持ってきてほしいわけです。若いうちから、事業の責任者になっている商社の方の評価は高いですね」
「ヘッドハンターを利用して大手グローバル企業が採用するのは、創業者タイプよりも、大手企業の組織を経験してきた人です。マーク・ザッカーバーグ(フェイスブックの創業者)タイプは求められていません」(p39)
さらに、ヘッドハンティングされるには、普段どういう心構えで仕事をすればいいのか。ヘッドハンターの証言によると、
「ゼロリセットできる人、謙虚な人、エネルギーレベルが高い人は、こちらも自信を持ってクライアントに紹介したいとおもいますね。よく、『どうやったらヘッドハンティングされますか』と聞かれるのですが、『目の前の仕事を一生懸命やって、一目置かれるリーダーになってください』とお答えしています。外資系でも日系でも、われわれは、経営幹部・幹部候補を探しているわけですから」(p39)
とのことです。とりあえず、目の前の仕事で成果を出すこと、それが重要なんでしょう。とはいえ、高学歴・大企業の話だと思いますが。
外資系の採用について
プレゼンテーション能力、やっぱり大切なんでしょうねぇ。弁が立つ人が多い印象ありますもんね。
大手グローバル企業の新卒採用では、プレゼンテーション能力をよく見ているという。英語でも日本語でもプレゼン能力は外資系では必須。新卒で日本ヒューレット・パッカード(日本HP)に入社したAさん(30代・女性)は、「HPを目指している方には事前にプレゼンテーションの練習をすることを強く勧めますね」という。自分の主張を論理的に語れるかどうかが、評価の大きなポイントだそうだ。(p63)
外資系のキャリアパスのイメージについて。
「日本企業の人事の方は、僕が二十年から三十年働くことを前提に話をしますよね。反対に外資系は、三年から五年のスパンで話をします」
外資系事業会社の日本法人では、二十代から三十代の若手社員を中途採用で雇用するとき、最初から「幹部候補」と「専門職」で分けて採用することもある。
実は、Aさんは幹部候補として採用され、Bさんは専門職として採用されたのである。外資系企業の日本法人では「何十年もマネジャー」という人が結構いるが、実は皆、専門職採用で、給与は上がっても職位は上がらない。
外資系企業では、候補者のスペックによって採用時にどこまで出世させるか(あるいは、全く出世させないか)、だいたい決めているのである。(p68)
外資系という企業
個人的に面白かったのが、ローカライズされているかどうかの目安について書かれている部分。
業績がいい日本法人はローカライゼーションが進むと言われている。日本のやり方で成功していると認めてもらえるからだ。どの会社がローカライゼーションが進んでいる会社か、見分ける一つの目安として会社名がある。
一般的に、会社名に漢字で「日本」がついている会社はローカライゼーションが進んでいる日本法人、会社名の最後にカタカナで「ジャパン」といういている会社は、本社の権限が強い中央集権型企業の日本法人だと言われている。
前者の代表格が日本IBM、日本マクドナルド、日本コカ・コーラ、日本マイクロソフトで、後者でいえばアップル・ジャパン、スターバックスコーヒージャパン、GEヘルスケア・ジャパンなどがあげられる。
なるほどねぇ、と。
外資系に勤務すれば海外で働けるのか?
外資系で働くと、世界を股にかけて仕事ができるようなイメージがありますが、実際は全然違いますよね。
外資系でうまくキャリアパスに乗っていければ別なのですが、意外と、多くの人が、国内に留まって仕事をしています。
外資系企業の日本支社から海外本社への転勤は、実は至難の業なのである。
多くの外資系企業の日本法人の採用は、日本企業でいう地方支店の地方採用と同じ。ずっと地方で働くことを前提として採用しているのである。本社に転勤させて育てようなんていう気はさらさらない。海外本社で働きたかったら、自分で求人を見つけて面接に行って、本社に「転職」するしかないのだ。
海外で働きたいのであれば、日本企業の方が余程チャンスがある。(p158)
日系メーカーなどの方が、駐在勤務が多いのが実際的な話な気がします。私の周りでも、海外で働いている人は、わりと国内企業が多い印象です。
「海外で働く」、「海外を相手(お客さん)に働く」、「海外の人(上司・社員)と働く」というのは、似ているようで全然違いますよね。
外資系企業で部署間移動ができるのは、リーダー候補として採用された人か、リーダーとして素質があると認められた人。こういう特別な人たちは、会社の「リーダー育成プログラム」の下、部署間異動、時には海外赴任まで経験しながら、経営幹部として育てられる。(p173)
「日本GEといえでも、残念ながらグローバル企業のローカルオフィスであることに変わりはない。次に転職するなら、、自らが世界中を飛び回ってグローバルな仕事ができる『日本企業』と決めていました」(p189)
GEは、採用の段階で、幹部候補生採用として、リーダーシッププログラムに進むキャリアがありますよね。
グローバル企業のトップの特徴
では、最後に、そんな外資系のトップに立っている人たちの特徴を。なんとなく、スティーブ・バルマーをイメージしながら読んでいました。
- 恐ろしく弁が立つ(コミュニケーションの技)
- 社内政治に長けている(コミュニケーションの技)
- 弱みを絶対見せず、プレッシャーに強い(精神力)
- 異常に長時間働く(体力)
- 十分お金持ちなのに戦うことをやめない(体力・精神力)
全方位的にすごくないと、グローバル企業でトップにはなれませんよね。まー、なんかすごい世界です。
書評のまとめ・感想
この手の本はどうしても、どこかに視点が偏ってしまうことは仕方がないと思います。客観的に論じるのは、難しいですよね。
本書は、外資系でぐんぐんキャリアを築いていきたい人には、参考になる部分もあるのではないでしょうか。高学歴で、MBA取得を考えているような一握りの人たちかもしれませんが。
外資系で働く人、働きたい人は、以前に比べて増えていると思います。就職・転職を考える上でも、間違ったイメージを持ったまま外資系に入社すると、あとで大変です。
社内の仕事、階層的なキャリアの構造など、知っておくとタメになる情報が多いのではないでしょうか。就活前に読んでおくのもいいかもしれませんね。
さらっと読める新書なわりに、色々役立つ情報も満載です。読みやすい本ですので、ご興味ある方は、ぜひ一度ご覧ください。
次に読みたい関連書籍 & オススメ本
最初にご紹介しましたが、著者佐藤さんが、MBA取得までを綴った体験記。
トップが自分たちのキャリアを振り返る、「外資系トップの仕事術」が、外資系キャリアのイメージがつかめやすくて、面白いです。
あと、奈良タカシさんの本が面白いんですよね。他にも本を出して欲しいくらいです。
著者の奈良さんは、外資系転職サイト「Dai Job」で現在も、連載を続けています。
『タカシの外資系物語』
(つい先日、一時休載になってしまいました・・・)。
外資系関連の本は、まだまだ沢山ありますが、また次の機会にご紹介したいと思います!
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